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甲斐みのりのロマンチック案内 旅、街歩き、お菓子、器、洋服、お酒、読書、音楽…etc。愛らしく美しいもの、澄んだもの、おいしいものや、おしゃれなど。『乙女の京都』、『乙女の東京』、『乙女の大阪』『京都ロマンチック案内』の著者、甲斐みのりさんが日々の中で、見つけたり、出会ったり、気になったり、ロマンチックを感じるモノやコトを、写真に短いエッセイを添えてご紹介する連載が「甲斐みのりのロマンチック案内」です。少しの間、日常の忙しさから離れて、どうぞゆっくりと、ご覧ください。

甲斐みのり(かい・みのり)

1976年静岡生まれ。文筆家。大阪芸術大学卒業後、数年を京都で過ごし、現在は東京にて、雑誌や書籍で執筆を行う。また、「女性の永遠の憧れ」「叙情のあるものつくり」をテーマに、雑貨の企画を行うブランド「Loule」(ロル)を主宰。著書に『乙女の京都』『乙女の東京』『乙女の大阪』『京都ロマンチック案内』(以上すべて小社刊)、『京都おでかけ帖〜12ヶ月の憧れ案内〜』(祥伝社)、『甘く、かわいく、おいしいお菓子』(主婦の友社)、『クラシックホテル案内』(KKベストセラーズ)、『乙女みやげ』(小学館)、『ジャーナル』(mille books)などがある。http://www.loule.net

12 雑司ヶ谷散歩、鬼子母神堂あたり。

秋になった。
朝夕の風がことさらに心地のよい季節。
日差しはまだ強いけれど、空気はカラっとしているから、
秋は散歩にうってつけ。
ときどき講師に呼んでもらうカルチャースクールで、
もうすぐ、「甲斐みのりと巡る秋の東京 雑司ヶ谷~目白」という
一日だけの講座がある。
日頃、東京散歩は趣味のひとつで、時間があればいたるところを
ぶらぶらとするのだけれど、雑司ヶ谷界隈は何人か集っても歩きやすいところ。
それに少し前から、毎月「手創り市」が催されるようになって、
さらにぐっと身近なところとなった。
「手創り市」へ赴いたあと、周辺の商店を巡りつつ、目白や池袋を目指し、
帰路につけば、ちょうどよく1日過ぎる。
みどころ、楽しみどころは、まだまだあるけれど、
雑司ヶ谷を代表する「鬼子母神堂」あたりをご案内。
「目白編」はまた次の機会に。

ロマンチック 現実を離れ、情緒的で甘美なさま。また、そのような事柄を好むさま。空想的。風景、もの、こと、人、場所、想い、出会い、目にして、触れたとき心がユラリと揺れるような甘く、優しく、ふんわりとした気持ちになれる、さまざまを、ご案内いたします

都電荒川線

小箱が車とかけっこしているような、おもちゃみたいな愛らしい電車、
都電荒川線「鬼子母神前」から、参道のケヤキ並木を抜ける。
石畳の道の先にあるのが「雑司ヶ谷鬼子母神堂」がよく知られる「法明寺」。
安土桃山時代、「稲荷の森」と呼ばれていた地に建立され、
安産・子育ての神さまとして信仰を集めてきた由緒あるところ。
お堂も周辺の町並みも、昔ながらの風情が残っているから、
ときどき散歩がてら訪れては、のんびり過ごす。
天女の姿をした鬼子母神仏教の守り神で、手に子どもやザクロを抱く。
人の子を食べ非行を働いていたのを戒めるため、
仏陀が鬼子母神の末子を捕まえ隠したところ、
母として嘆き悲しみ、それまでの悪事を悟った。
以来、釈迦に帰依し、子育ての神になることを誓ったという。
仏になった鬼子母神から角が消えたことから、
鬼子母神の正式な表記では、「鬼」の字に「′」(角)がない。

手創り市

毎月一回、鬼子母神堂境内で開催される「手創り市」。
朝早くでかけ、「ヤマコーヒー」の自家焙煎コーヒー豆、
焼き菓子、リネンのタオルなどを買い求める。
境内自体、そんなに広くはないぶん、
1時間もあれば隅々まで見て回れるのも、くたびれることなくちょうどいい。
評判の店は、行列をつくっていたりもするから、
堪能するのはやはり早くからでなければと思う。
そうして最後は、鬼子母神に1000人の子がいたことにあやかり、
子宝に恵まれるようにと名付けられた「おせん団子」でひと休み。
おせん団子とは、江戸時代には参詣みやげと親しまれていたもの。
毎週日曜日と縁日に限り「羽二重団子本舗」が、
境内の大黒堂で団子の販売を始めた。
こし餡と生醤油2本セットの、江戸の味をご堪能あれ。

上川口屋

『乙女の東京』P30でも紹介している「上川口屋」。
鬼子母神堂境内にあり、徳川家慶も立ち寄ったと伝わる、
東京でもっとも古い、趣ある駄菓子屋。
串にささった丸いカステラ、占いがついたチョコレート、
小さな四角い粒の餅、キナコ棒、キラキラ輝くゼリー……。
そこに並ぶ駄菓子は、子どもの頃に大好きだったものばかり。
ひとつひとつ、「これは○○ちゃんと食べた」とか、
「遠足に持っていった」とか、思い出を語れる。
それから「上川口屋」前では、ときどき猫が、ゴロンと転がっていたりする。
鬼子母神堂境内を離れ、辺りを歩いているときも、何匹もの猫と出合う。
雑司ヶ谷は東京でも屈指の、猫が似合う町なのだ。

すすきみみずく

仕事場の玄関で、毎日を見守ってくれる「すすきみみずく」。
むかし、ある少女が病気の母親のために鬼子母神堂に参ったところ、
「ススキの穂でみみずくを作って売り、薬を買いなさい」と、
夢に現れた鬼子母神からお告げがあった。
以来、豊島区の郷土玩具として全国に知れ渡ったのだけれど、
今はもう、「すすきみみずく」を制作しているのは、
鬼子母神前「音羽屋」ただ一軒。
ちなみに、ウサギの耳のような羽毛があるミミズクは、フクロウの仲間。
「不苦労」「福籠」という文字におきかえられることから、縁起ものに。
池袋駅周辺には、フクロウの石像やレリーフなどたくさん。
さらに豊島区の地図は、まるでフクロウが羽を広げている姿のよう。
ミミズク・フクロウと、豊島区は、深い縁で結ばれている。

<告知>

「甲斐みのりと巡る秋の東京 雑司ヶ谷〜目白」
という街歩きの講座も来月開講いたしますので、ぜひご一緒に。

10月11日(日)  10:15〜14:30

『乙女の東京』をともにつくった
マーブルブックスさんが池袋コミュニティカレッジで開講する講座の
一日講師をつとめさせていただきます。

鬼子母神で毎月1回開催される『手創り市』を皮切りに、
昔ながらの風情が残る歴史ある町、
雑司ヶ谷〜目白を数時間かけて案内させていただきます。
途中、写真撮影やつまみぐいなどしながらぶらぶらと、
ともに歩けたらと思います。

<主な案内予定場所>
・鬼子母神堂「手創り市」、「おせん団子」、「上川口屋」
・雑司が谷旧宣教師館
・目白ヶ丘教会
・目白聖公会
・聖シプリアン聖堂
その他、小さな商店や史跡なども巡ります。
最後は自由参加で、カフェでお茶をいただける時間も準備しています。

詳細・お申し込みはこちらをどうぞ。
http://www.7cn.co.jp/cc/topics/index2.html

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MARBLE BOOKS 甲斐みのりさんの著書 好評発売中 乙女の京都 乙女の東京 京都ロマンチック案内

 バックナンバー

01 「イイダ傘店 平成二十一年春 日傘展」

02 「ロマンチックに酔うために」

03 「第十一回亀倉雄策賞受賞記念 植原亮輔展」

04 「恋に落ちた瞬間」

05 「『乙女の大阪』写真の奇跡」

06 「竹皮編み展」

07 「ホテルニューグランド」

08 「甘いしみ 苦いしみ」

09 「涼しい和菓子」

10 「祈りの場所」

11 「夏の思い出」

12 「雑司ヶ谷散歩、鬼子母神堂あたり。」

13 「ロマンチックな甘い粒。」

14 「ところどころ」に、ロマンチック。

15 「ロマンチック競馬案内」

16 「大仏、サブレー、コケーシカ。」

17 「ねこ、ねこ、毎日。」

18 「ベッドサイドブック」

19 「4th-market 企画展 作り手と使い手」

20 「娘であること」

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