r.o.m.o.トップページ > 木もれ陽だより > 甲斐みのりのロマンチック案内



1976年静岡生まれ。文筆家。大阪芸術大学卒業後、数年を京都で過ごし、現在は東京にて、雑誌や書籍で執筆を行う。また、「女性の永遠の憧れ」「叙情のあるものつくり」をテーマに、雑貨の企画を行うブランド「Loule」(ロル)を主宰。著書に『乙女の京都』『乙女の東京』『乙女の大阪』『京都ロマンチック案内』(以上すべて小社刊)、『京都おでかけ帖〜12ヶ月の憧れ案内〜』(祥伝社)、『甘く、かわいく、おいしいお菓子』(主婦の友社)、『クラシックホテル案内』(KKベストセラーズ)、『乙女みやげ』(小学館)、『ジャーナル』(mille books)などがある。http://www.loule.net



鳴子や盛岡を旅しようと決めたのは、
『here and there』の創刊号を読んで。
日本語と英語、ふたつの言葉で綴られているところ。
特別そうじゃない紙をめくるときのかりかりとした指触り。
服部一成さんのデザイン。
パリのこと、スーザン・チャンチオロのこと。
アートやファッションや一個人について。
発行人でジャーナリストの林央子さんが
足を運び、人と会い、抱いた感覚や感情。
なにかを感じたり書いたりしてみたいのに、
どうしたらいいか分からなかったその頃の私が、
知らなくて知りたくて憧れていたもの。
『here and there』の中に見つけた。
2002年の春のこと。
毎晩、眠る前に読んだ。
央子さんの言葉、詩みたいだなあとか、
海外の翻訳小説みたいだと思って読んだ。
こんな言葉や風景が夢にでてきたらいいと。
言葉に添えられた写真をじっと見つめたりも。
そうして秋には、東北行きの電車に乗っていた。
ガイドブックなど持たずに。
『here and there』だけを抱えて。
以来、毎年、新しい号が出るのを楽しみにしている。
そういえば、「『here and there』いいよね」と言って
共通言語が発生し、仲良くなった人もいた。
いわゆる、『here and there』と、林央子さんのファン。
シンプルにいつも、言葉もデザインされ印刷された紙そのものも
好きだなとしみじみ思う。
そんな『here and there』の9号、
「Her Life」の発売を記念した展示へ赴くため、
〈Now IDeA by UTRECHT〉へ。
今回のロマンチックは、そのときの写真。

『here and there』最新号、バックナンバーは、
〈Now IDeA by UTRECHT〉でお求めいただけます。
10月から〈Now IDeA by UTRECHT〉内に
カフェ「aMoule」がオープンしました。
http://www.nowidea.info/


会場に貼ってあった、『here and there』9号のポスター。
デザインは服部一成氏。
9号のテーマは「Her Life」。女性の人生。
「世界は単純ではなく、感情にみちていて、未解決の問題や新しい謎でこぼれそうだ。目の前の一つひとつのことに必死になって、時間は飛ぶようにすごていく」
林央子さんの言葉が核心に響く。
央子さんが見つめた、さまざまな「ところどころ」に、
いつも光のようなものを感じる。
なにかを読んでなにかを感じる。
誰かの生き方になにかを感じる。
そういられることが嬉しい。
「Her Life」には、大好きなミランダ・ジュライのテキストもある。
ミランダ・ジュライが書いたのはなんでも全部読みたいと思っているから、
それも嬉しい。


イラストレーターの塩川いづみさんと、
アクセサリー作家の下川宏道さんによる、
「言葉を刻む指輪」。
言葉のカードと、カードと同じ言葉が刻まれた指輪が、
天井から吊るされた赤い糸の先で揺れる。
言葉のカードと指輪の下のテーブルの上には
塩川いづみさんのイラストが並んでいたのだけれど、
カードの四角や、指輪のまるい影が
猫や人や時計やマッチの
イラストの上をひらひらと行き来して。
言葉が絵に憧れているようで。
切なくもなる。


ミナ ペルホネンの長江青さんと、下川宏道さんによる、
「思い出を留める指輪」。
天井から吊るされ宙に浮いた下川宏道さんの指輪に結ばれた
赤い糸や毛糸やリボンを辿っていくとその先に、
ぬいぐるみ、切手、ノート、お菓子の箱などなど。
長江青さんの思い出の品々が。
赤い糸がつなぐ、指輪と思い出。
なんてポエジーでロマンチックなの。
少女時代、おまじないの本を読んで、
好きな人と両思いになれるならばと、
ポケットにいつも赤い糸をしのばせておいたり、
宝物に赤い糸を結びつけたりしていたこと思い出す。
それにしても両思いって、かわいい言葉。
指輪と思い出の品もまさに、両思いの形だった。


9号の特集「Her Life」で、央子さんが訪問されていた、
山田愛子さんの作品。
壁に並ぶ押し花や押し葉たち。
美術館に飾られているもの、
触りたくなってしまう子どもだったけれど、
もちろんそれは怒られることで、
だから影を通して触れることを覚えた。
このけなげな葉っぱにも、やっぱり影で触れてみた。


